恋の訪れ

「ほんと莉音は忙しい奴だな」

「え?あたし忙しくないよ。毎日暇してる。だから絵ばっか描いてる」

「ちげーよ、そっちの忙しいじゃねーよ。莉音が毎日暇してる事くらい知ってるっつーの」

「うん?」

「喜怒哀楽が忙しいっつってんの」

「うーん、そうなのかな?でも怒る時ってお姉ちゃんとかママとかパパかな」

「うん、だからな、莉音の事すごく心配してるから。…そうなったのも俺の所為だけど」

「違うよ?昴先輩じゃないよ?あたしが言う事聞かなかったから、だから…」


そこまで言って口を閉じる。

だって、あたしが言う事聞かずに行ったから。

なのに、どうして先輩は俺の所為って言うんだろう…

違うのに。


「莉音の事、みんな心配してる。香恋さんだってお前の事ものすごく心配してるし。葵ちゃんも諒也さんも心配してるから莉音に厳しくしてるんだろ?」

「……」

「言っとくけど、美咲も親父も莉音の事、大好きだしいつも莉音の事、気に掛けてるぞ?香恋さんよりも莉音の事をずっと聞いて来る」

「……」

「莉音?」

「…うん?」

「莉音は皆から愛されてるよ。ほんと、そこだけはすげーなって思う」

「…そこ、だけ?そこだけなの?あたしの凄いところって、」

「つか、そこ重視すんなよ。…ほら、もう着いたし行くぞ」


いつの間にか車は停車してて、あたしと昴先輩は車から降りる。

石段を登り敷き詰められた砂利を音を立てながら歩いて行く。
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