恋の訪れ
登り切って、深呼吸をして、あたしは願った。
お姉ちゃんが優しくなりますように。
みんなあたしの事を馬鹿っていいませんように。
あたしの耳がよくなりますように。
パパとママが元気でいますように。
昴先輩とずっと一緒に居られますように。
…って、願い過ぎですか?
でも。本当の願いは…
″昴先輩が留学して成功しますように″
ゆっくり目を開けて後ろを振り返ると、昴先輩はフッと笑って笑みを漏らす。
「莉音さ、どんだけ願ってんだよ。願い過ぎだろーが」
「そんな事ないよ?昴先輩は何願ったの?」
「俺はー…莉音の頭が良くなりますようにって」
「なにそれっ!」
「で、お前は何?」
「言わないよ。言ったら願い叶わなくなっちゃうもん」
「つか、そんだけ願ってたら叶いそうにねーけどな」
「そんな事ないよ。大丈夫」
「何を根拠に大丈夫とか言ってんだよ。で、この後何処いくんだよ」
「んー…どうしよっか」
「別に無理して考えなくても――…あ、美咲から」
不意に鳴り出した昴先輩の携帯。
取り出して美咲さんの名前を呟いた先輩は「はい」相変わらず素っ気ない声を出した。
「…――え?いるけど何だよ、…あー、分かった」
「どうしたの?」
携帯をポケットに仕舞った先輩に視線を送りながら声を掛ける。