恋の訪れ
「なんか美咲がお前と居んのか―って聞いてきたから居るっつったらケーキ買って帰るから一緒に帰って来いってさ」
「え、ケーキ?うん、食べる食べる」
「って、お前この前も食っただろ。タツキ達と」
「え、でも美咲さんが買ってきてくれるんでしょ?食べないと失礼だよ」
「ただお前の場合は食いたいだけだろーが」
「いいじゃん別に。それにしても美咲さんよく分かったね、あたしが先輩と居るの」
「家出る時に聖に言ったからな。あいつもあのケーキの犯人だし」
「犯人って、人聞き悪いよ」
「つかお前が一番食ってんだからな」
「…はい」
とりあえず呟いて笑って見せる。
だけど先輩はあたしを見下ろしたかと思えば深いため息を吐き捨てた。
ちょっと本屋に寄り道をして昴先輩の家に着いた時、丁度玄関からパパと美咲さんが出て来たところだった。
パパの手には花が抱えられててじっと見てると、
「あ、莉音ちゃんこんにちは」
あたしに気付いたパパが優しい笑みで声を掛けてくれた。
「こんにちは。お邪魔します」
「どーぞ」
コクリと頷くあたしに、「あ、莉音ちゃん」美咲さんが続けて口を開いた。
「はい」
「ケーキ冷蔵庫に入れてるから食べてね。あとね、テーブルに紙袋あるからママに渡して。お菓子だから莉音ちゃんも食べてね」
「あ、ありがとうございます」
「いいの、いいの。最近会ってないから諒ちゃんも元気?」
「はい元気です」
「そう。良かった」
ニコッと微笑んだ美咲さんは先輩のパパが居る車へと歩き出し、
「あ、ちょっとアナタ待ってて」
今にでも車に乗ろうとしたパパが美咲さんを見つめた。