恋の訪れ

「もぉ、なんで先輩は愛想悪いの?美咲さん達にだって物凄く態度悪いじゃんか」

「は?普通に接してんだろうが」

「そー言うの普通って言わないし」


頬を膨らませて眉を寄せる。

ほんとに意地悪なんだから…


「ほら。食わねぇのかよ」

「もちろん食べるよ」

「皿とフォークまで持ってきてやったんだぞ。アナタありがとうって言ってみろよ」

「え、」


何故か思わず頬が緩んでしまった。

先輩の事をアナタ…

考えただけでもドキドキしちゃう。


「ばーか。夢見る夢子さん、妄想で頭ん中お花畑になってんじゃねーよ」


昴先輩があたしの額を押すもんだからグランと頭が反り返る。


「もぉ…」

「ひとつだけにしとけよ。後で飯食うんだからよ」

「はーい。でもさ、なんか言いづらいよね美咲さん達に。私、パパとママにも言えない」

「何がだよ、」

「だから、その…先輩と付き合ってる事」


なんかわかんない。

言って恥ずかしくなった。

下を向いてケーキにフォークを刺しながら俯いてしまった。


「なんでそこで恥ずかしがんだよ、この変態」

「もぉ、変態じゃないから!」

「つか、もう既にみんな知ってるっつーの」

「えっ!?なんで?なんで知ってるの?」

「サクヤが美咲に言ってたから。だから当然、葵ちゃんも知ってる」

「えーっ、なんでサクヤ先輩言っちゃうの?」

「喋りだからな」

「なんかさぁー…サクヤ先輩が言うと怖いよね」

「なんで?」

「だってある事無い事言うんだもん」

「だからそれはお前で遊んでんだよ。軽くあしらっとけ――…」

「キャー、なにこの豪邸!お城じゃん。おっじゃましまーす」


えっ、なに?なんなの?

突然弾けた甲高い声に顔が強張った。

それは目の前の昴先輩もどうやら同じだったらしく、一瞬にして眉間に皺が寄ったのが分かった。

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