恋の訪れ
「おはよ」
テンションがた落ちのまま不意に聞こえた声に視線を上げた瞬間、さっきまでの不愉快な気持ちが一気になくなる。
「あ、おはよ。ヒロ君」
やっぱヒロ君は素敵。
その爽やかな笑顔が王子様に見える。
「どーした?元気ねぇじゃん」
「え?…そう?」
「ボーっとしてる」
「えっ、そんな事ないよ」
素早く首を左右に振る。
昨日の合コンが疲れたの。なんて言えるわけでもなく、ニコっと笑って誤魔化した。
でも心の中では、さっきサクヤ先輩と居たの見られてないよね?なんて思ってしまった。
出来るだけ先輩達と居る姿なんて見られたくない。
あんな有名であろう先輩達と一緒に居る所をヒロ君だけには何故か見られたくないと思ってしまった。
ヒロ君と別れた後、教室に入ると、ここぞとばかりに見つめて何だか不愉快な笑みを漏らす視線が突き刺さる。
椅子に座った瞬間グランと揺れる机とともに、
「莉音、昨日何処に行ってたの?昴先輩と」
クスクス笑う真理子は前の椅子に腰かけた。
ここでもその話し?
さっきサクヤ先輩で疲れたんだけど。…と思いながら思わず深いため息を吐き出す。