恋の訪れ

「えっと…聖くん、あたしの為って何?どうしてあたしなの?」


首をかしげながら聖くんに視線を送ると、聖くんも同じく視線を向けた。


「最後の晩餐会だろうが」

「晩餐会?…最後の?」

「そうだよ、莉音!兄貴が行っちまったらな、こうやって集まる事もねぇんだよ。だからお前のためだ」

「最後…」


不意に漏らしてしまった声がポツリと落ちる。

先輩ともぅ会うことも出来なくなっちゃう。

みんなとは会えるけど昴先輩とは会えなくなっちゃう。


「そうそう莉音ちゃん楽しもうぜー。だから今日はパァーっとやろうぜ」


サクヤ先輩の声が自棄に弾けてる。

なにがそんなに楽しいんだろうか。

先輩が居なくなっちゃうのに、なんで…


「…ちょ、ちょっと!アンタ達、空気読んでよ」


香澄先輩が戸惑った声を出す。

だから一瞬静まり返って、「あ、」と小さなサクヤ先輩の声が密かに聞こえた。


「あ、あー…莉音またケーキ食べてんの?ちょっとあたしにも一口頂戴?」


横からヒョイっと現れた真理子があたしのあたしのフォークを奪って、ケーキをひと口、口に運ぶ。

濁った空気をかき消そうとしてるのだろうけど、余計に悪くなる。

だって、真理子のアタフタ感がものすごく伝わって来るんだもん。


「お前らは邪魔しに来たのか?だったら帰れよ」


スッと聞こえた昴先輩のため息交じりの声。


「やだね。肉食いてーもん」


シレッとするサクヤ先輩に昴先輩が小さく舌打ちをした。

みんなでワイワイ楽しく。。。

楽しそうに騒いでる真理子達。

買ってきた物をテーブルに並べて、鉄板に火をつけて食べる準備をしている。


そんな光景をみながらあたしは立ち上がった。
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