恋の訪れ
「な、なにって、こんなところで」


昴先輩の身体を離し、思わずキョロキョロしてしまう。

今だに鳴り続ける冷蔵庫の音が気になって、あたしはパタンと扉を閉めた。


「じゃあ2階いく?莉音とエッチしたい」

「え、ちょっ、先輩っ、」


突然言い出した真顔の昴先輩に顔が火照り出す。

その頬を手で触れると、熱を浴びた感覚になってくる。


「莉音としたい」


更に言葉を発してくる昴先輩に目が泳いでくる。

2階って言ってもみんな居るじゃん。

ワイワイ騒いでいる2階でそんなことー…


「…いったぁーい、」


不意にオデコに走った痛み。

その痛いのは昴先輩にデコピンされたせいで、顔を顰めてオデコを摩るあたしに昴先輩は意地悪くクスクス笑った。


「お前、なんか変な妄想してた?」

「し、してないよ!」

「アイツらいんのにするわけねーだろ」

「わ、わかってるよ!」

「あ、何?本気にした?莉音がその気だったら俺はいいよ」

「もぉ。本気にする訳ー…っ、」


再び塞がれた唇。

カウンターキッチンの奥。

冷蔵庫と壁で視覚になっているから向こうの様子は見えない。

だけど、誰か来たらと思うと変な緊張とドキドキ感に襲われる。

そんな事お構いなしの昴先輩は、あたしの唇を割って、舌を入れてきた。

みんなの笑い声が聞こえる。

昴先輩が何度も角度をかえながらキスを繰り返してくる。


あ、もぉダメ。

集中出来ないよ。

え、集中ってなんの?

ほんとにもぉ、誰か来ちゃう。


一向にキスを辞めてくれない昴先輩の胸に手を当てて強く押す。

そのせいで必然的にお互いの唇が離れ、あたしは乱れた呼吸を整えた。
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