恋の訪れ
「もぉ。莉音たべてばっかじゃん。ちょっとは焼いてよ」


ふくれっ面になった真理子は隣で顔を顰める。


「だって、今日はあたしが主役でしょ?」

「はぁ?何言ってんのよ。馬鹿言ってないで焼きなよ」

「もぉ、真理子まですぐ馬鹿って言うんだから」

「いっぱい食べて胸につきゃいいけどね」


フフッと笑った真理子に、「ちょ、真理子っ、」あたしは声を上げた。


「ほーら。莉音も手伝って。莉音のダーリンも焼いてばっかだよ。可哀相じゃん。あーん…でもしてあげたらどうなの?」

「えっ、」

「やだ莉音ったら。妄想しちゃって、かわいい」

「ちょっ、」


もぅ。

ほんとになんなの?

サクヤ先輩も真理子も。。。

あたしを虐め過ぎじゃない?


だからその食べてる手を止めて、あたしは昴先輩の横に行く。


「ねぇ、昴先輩?」

「うん?」

「あのね。サクヤ先輩も真理子もあたしの事、虐めるの」

「は?なに?なんか言われたのかよ」


肉と野菜を焼いてる昴先輩はあたしをチラッと見ては、また視線を鉄板に向ける。

その焼けてる肉を周りの皆がワイワイと食べていく。


「うん、言われた」

「だから何?」

「何って…言われても」

「言わなきゃわかんねーだろーが」


ごもっともな言葉を言ってくる先輩だけど、それを言わないとダメなのですか?

2階でセックスしてきたら?とか、胸にお肉がつけばいいとか?

あーん…して食べさせろとか?

そんな事、言えるわけないじゃん。

むしろ言えない。


「だから、虐めてくるって」

「だから何を言われたのか聞いてんだけど」

「言えないよ」

「はぁ?」

「だから言えない」

「…んだ、お前」


顔を顰めた昴先輩は、頭がいいのに言わないと分からないようだった。

頭がいいから言わなくても空気を読み取ってくれるんじゃないかって思ったけど、そうではなかった。

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