恋の訪れ
「どーしたの?先輩…」

「莉音ちの続き」

「ん?続きってなー…っ、」


不意に塞がれた唇。

突然の事だから息するのも忘れてしまった。

え?ちょっと、待って。

ここで?


「ちょ、せ、昴先輩っ、」


グッと先輩の身体を押す。

必然的に離れていった先輩を見つめた。


「なに?」

「な、なにって、ここで?聖君いるよね?」

「いねーよ。さっきサクヤ達と出て行った」


そう言って昴先輩はあたしの後頭部に手を回し、グッと自分の方に近づける。

あともう少しで唇が触れ合う時、あたしはもう一度先輩の胸を押した。


「先輩っ、美咲さん達かえってくるから」

「まだ帰ってこねーだろ」

「だ、だってもうすぐ22時じゃん」

「24時まで帰ってこねーよ」

「そんな事分かんないじゃん」

「分かる。いっつも沙世んとこ行ったらそんくらいだから」


そう言って昴先輩はあたしの唇を奪った。

何度も角度を変えてキスを繰り返す先輩に心をゆだねるかのように、あたしまでもそれに受け答えてしまっていた。


唇を割って入ってきた舌が苦かった。

さっき先輩が飲んでいたブラック珈琲の味がして、苦かった。

その苦さと寂しさが混ざり合って、悲しみに変わっていた。


もうすぐ、さよならが近づいてくる。


昴先輩があたしのシャツのボタンを外して、唇から徐々にキスが下にへと落ちていく。


「…先輩、」


小さく呟くあたしの声に、昴先輩のキスが止まる。


「どした?」

「部屋に連れてってよ」

「わかった」


グッとあたしの身体を抱え込んだ先輩はリビングを出る。

その昴先輩の首に両腕を回し、先輩の胸に顔を沈めた。


もう、ほんとに居なくなっちゃうんだ。

泣かないようにって決めたのに、こうやって一緒に居ると涙が込み上げてくる。


もう触れられない、、、





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