恋の訪れ

「…別に、何もない」

「何もない事ないでしょ?だって昴先輩、莉音の鞄取りに来てたじゃん」


真理子はここぞとばかりにイヤらしい笑いを見せた。


「えっ!?見てたの?」

「チラッと見たら先輩、莉音の鞄持って出て行ったもん」

「あー…」

「で、何で?」

「何でって?」

「だから何で先輩が莉音の鞄持って行ったのかって!」


グッと近づいて来る真理子の瞳があまりにも怖くて少しだけ身を引く。


「しんどかったの。なんか疲れてたし…」


それはホントの事。

嘘なんかじゃない。


「へー…そうだったんだ。で、送ってもらったの?」

「送って…?」


思わず首を捻ってしまった。

あたし、送ってもらったんだろうか。


でもサクヤ先輩が自転車を貸したって言ってた。

それはあたしを送る為だったんだろうか。


何処まで記憶がないんだって程、分かんない。

だけど、昴先輩があたしを抱きかかえてたって事だけは分かる。



やっぱ、あたし…
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