恋の訪れ
ガチャっと玄関のドアを開けると、そこに顔を出してきたのはパパで。

よりによってパパだった。


「ただいま」


パパと目が合った瞬間、「おかえり」そう言ってパパの視線が昴先輩に向く。


「昴、悪いな、莉音送ってもらって」

「いえ、遅くまですみません」

「まぁ昴だから安心してっけどな。こんな遅ぇ時間まで連れまわしてんのが他の男だったら怒ってんぞ、俺は」


そう言ってクスクス笑いだすパパはやっぱり先輩だったらいいらしい。


「まぢ怖いっすね、諒也さん」


そんなパパに昴先輩は苦笑いしてた。


「あー…、いつも昴君ごめんねぇ」

「あ、いえ」


ママまでも出てきてしまった。

だから別に顔なんか出さなくてもいいのに。


「これね、美咲さんからもらったの」


紙袋の中身を見せるとママは困ったように先輩を見つめた。


「もぉ、ほんと美咲はいつも莉音に手土産持たせるんだから。莉音の事、甘やかしすぎだよねー。ごめんねぇ」

「いや、美咲こー言うの好きっすから」

「また美咲に電話でもしなきゃー…」


ガチャと開いた玄関の音でママの言葉が遮られる。

そこから顔を出したのはお姉ちゃんで、

「うわっ、なにぃ?この集まり」

そう言ってあたし達を見たと思えば、フフっと笑った。


「なに昴?あんたもしかして留学前の結婚報告しに来たの?」


け、け、結婚!?

突然、そんなことを言うお姉ちゃんに目が見開いた所為で言葉を返すことも忘れてしまった。

そんなお姉ちゃんはクスリと笑って昴先輩を見つめる。


「は?てか、香恋さん酒くせーよ」

「うるさいわねっ、」


先輩を見て吐き捨てるお姉ちゃんは本当にお酒臭い。

だけど、そんなお姉ちゃんを見てパパとママは呆れた表情で何も言わなかった。
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