恋の訪れ
「じゃあ、もう行くわ」

「うん。いってらっしゃい」

「行ってきます」


離れる時に手渡された金平糖。

あたしの頭をそっと撫で、昴先輩があたしに背を向けて歩き出した。

その背中にまた涙が走ってしまった。

なんで、こんなに涙が出てくるんだろうって思った。

ビックリするくらい涙が出て、もう枯れちゃうんじゃないかって思った。


「…莉音?」


暫くすると真理子が姿を現し、ギュッと抱きしめてくれる。

そんなあたし達に更に香澄さんが抱きしめた。


「まだまだ皆、一緒だよ莉音」

「うん」

「じゃあ、この後ケーキ食べに行こう」

「え、いいの?」

「いいに決まってるでしょ。サクヤの奢りでね」

「は?なんで俺?タツキがいんだろーが」

「俺、今日金あんま持ってきてねーし」

「じゃあ、行こう!莉音いくよっ、」


香澄先輩があたしの手を掴んで歩き出す。

そして真理子も、あたしの腕に絡みついた。


「莉音。ずーっとこれからも一緒だよ」

「うん」

「あたしの事、好きでしょ?」


真理子が微笑みながらあたしの顔を覗き込んでくる。


「うん、好きだよ」

「嘘つけ―っ、適当に言って笑うな―」

「もぉ、真理子、痛いよ」


むぎゅっとあたしの頬を引っ張る真理子はクスリと笑った。

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