恋の訪れ
昴先輩が旅立ってから二週間。

先輩が居ない毎日がたまらなく寂しく感じた二週間。


あたしは高校二年生になった。

新一年生が入学して、あたしも先輩になったわけで。


「莉音、もう二年生だよ、早いねー」


相変わらずの真理子はバッチリメイクで新年度を迎えるらしい。

昼休み。

天気もいいし、空気も気持ちいいから真理子と、昼食をとっていた。


「うん、早いね」

「なんかあれだよねー…先輩たちが居なくなって静かになったね」

「うん、そうだね」


ほんとに静かだ。

あの時はみんなでワイワイして楽しかったな。


「楽しかったよねー…」


真理子はベンチに深く腰をつけて、空を仰いだ。

思い出すように真理子は笑みを浮かべながら、「ね?」と、あたしを見て微笑む。


「うん」


このベンチでよく昴先輩寝てたなー…

懐かしい…


「莉音、そんな顔しないでよ。あたしがいるでしょ?」

「うん、でもさーー…」


昴先輩がいいな。って口を開こうとしたときだった。


「おい、莉音」


不意に聞こえたその声にハッとし、あたしの目の前に現れた顔に思わず呟いてしまった。


「…昴先輩、」

「はぁ?」


だけどそれもつかの間。

眉を顰めてあたしを見るのは先輩じゃなくて…

聖君だった。


「こ、聖君…」

「あら、だや。男前が出て行ったと思ったらまた男前ですか?」


アハハ。と笑う真理子は、あたしを見て何故かクスクス笑った。


「聖君、どうしたの?」

「どーしたのって、見れば分かんだろ?俺もこの学校に来たんだよ」

「なんで?…え?聖君、あたしが居るから来たの?」

「はぁ?んなわけねぇだろーが。なんで俺が兄貴の女追っかけてこねーといけねーんだよ。馬鹿じゃねーのお前」

「ば、馬鹿って言わないでよ、」


ギャハハハ。と隣から真理子の笑い声が響く。
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