恋の訪れ
「ちょ、ちょっと聖くんっ、」

「うん?」

「聖くん、友達だよね?」


あたしはそう言って、手の平を広げて隣の男の子に向ける。


「そうだけど」

「なんで何も言わないの?」

「なにが?」

「あたし困ってるよね?」

「あ。お前、困ってたの?」

「困ってるでしょ、」

「いや、だって俺関係ねーし。伊吹が誰を好きになるとか関係なくね?」

「ちょ、ちょっと、」


どうやら聖君はあたしを助けてはくれなかった。

この隣に居る男、伊吹くんという男はやっぱり危険だった。


「で、先輩、どーします?」


覗き込まれる瞳の眼力があまりにも強くて、あたしは真理子の方に身体を寄せる。


「ご、ごめんなさい」

「でも、俺。諦めませんから」


フッと笑ったその笑みがこれから先、なんだか思いやられそうになった。


「あー…腹減った。聖、食堂行ってくっから」


立ち上がった伊吹くんは聖君を見下ろし、歩き出していく。


「ね、ね、ねぇ…聖君の友達、なんなの?」

「なんなのって言っても、何がだよ」

「あの子、絶対危険だよね?」

「莉音!俺はお前の味方だかんな。俺は兄貴には何も言わねー」

「は?どー言う意味でっ?」


あたしの声など無視して、聖君は足を進めていく。

え、なに?

なんなの?

意味分かんないんだけど。


「ねぇ莉音?なんだかこれから楽しくなりそうだよね?」

「は?どこがっ?」

「なんかさ、この2年間はどんなことが起こるんだろーって、あたしは楽しみでしかないよ」

「ちょっと真理子っ、何言ってんの?」


焦るあたしとは対照的に真理子はクスクス笑ってた。

そんな今頃、昴先輩は何やってんのかなーって、頭の中で考える事しか出来なった。

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