恋の訪れ
「ほら、さっき聖が言ってたでしょ?…昴の子供、妊娠してるって」

「えぇっ、ゴホッ、」


思わずぶっ飛んだ事を言ってくるパパに、飲んでいたオレンジジュースが変な気管に入ってしまってむせ返る。

なんで?

なんでそうなってるの?

なんで聖君、そんな事、言っちゃってんの?


「聖が、莉音ちゃんが気持ち悪いって、それはつわりじゃねーの。って言ってたから」

「え、ちょ、違います!」

「え、違うの?」

「違います。妊娠なんてしてないですから!」


思わずちょっと大きな声を出してしまった。

聖君が変なことを言った所為でびっくりして大きな声を出してしまった。

出してしまったもんだから、周りの人たちの視線がこっちにチラチラ向かってるのが気になって仕方がなかった。


どうみてもこの光景おかしいじゃん。

制服を着たあたしと、目の前にはスーツをカッコよく着こなした大人の男性。

しかも相変わらずの紳士な男前のパパだし。

絶対、勘違いされてるよ、あたし達。


だけど、パパはそんなのお構いなしに、ホッとした表情を見せた。


「あ、そか。良かった。あいつ、聖の奴、怒っとかねーとな」


物凄く先輩のパパは安堵のため息をつき、珈琲を飲む。

良かった?

何が良かったのだろう。

なんなら先輩と離れるんだったら妊娠でもしときゃ良かった。なんて思うあたしは相当馬鹿な考えをしてしまっていた。


「良かった…んですか?」

「え?」

「もし、そうですって言ったらどうしてます?」

「どうって、そんな事になってたら俺、諒也に会わす顔ないでしょ?それに昴の父親として、俺はあいつを殴ってるよ」

「……」

「…莉音ちゃん?」


パパの声までもが先輩の声に聞こえてしまう。

あぁ…

あたし重症だ。
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