恋の訪れ

「なんか…、まだ1か月も経ってないのに会えないのが寂しいんです」


…つらい。

こんな事言っても仕方ないのに。

しかもこんな事、先輩のパパに言っちゃうって、あたし、どうにかしてる。


おかしいよ。

自分でも思う。

先輩のパパに言うなんて。


「…うん」

「あ、すみません。先輩のパパにこんな事言ってしまって」


開き直って、視線を上げ、あたしは微笑んだ。

そんなあたしを寂しそうに見つめるパパは柔らかく頬を緩めた。


「分かるよ。俺も莉音ちゃんと同じ立場だったからわかるよ」

「それって美咲さんの事ですか?」

「うん。だから、莉音ちゃんの気持ちわかるよ」

「…5年って、長いですね」


長い。

長い。

ものすごく長い。

まだ始まってばかりなのに、ものすごく長い。


「俺もそう思ってた。待つ身のほうが長いってね。…莉音ちゃん?」

「はい」

「あいつに会いたくなったら言って。夏休みでも冬休みでもいいから。美咲が連れて行ってくれるよ」

「美咲さんが…」

「あー…うん、あっちにも会社あるから美咲がたまに行ってる」

「あっちの会社にですか?」

「ほら、美咲は英語が得意だから。行きたくなったら美咲が連れてってくれるよ?」


先輩のパパは頬を緩ませ、フッと笑った。

だけど――…


「大丈夫です。大丈夫…、待ってます」

「そう?」

「はい」


どれくらい居たのかも分かんなかった。

店を出ると、さっきよりも人が溢れてくる繁華街。

楽しそうに歩いてはしゃぐ人たちを見ると何故か苦しくなった。


昴先輩に会うと、帰れなくなっちゃうから。

だから、あたしは待ってる。
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