恋の訪れ
「あー、もう今日は莉音食べ過ぎちゃだめだからね!」
次の日の昼休み。
食堂に行くと、真理子は購入した菓子パンを持って、空いてる席に腰を下ろす。
「うん。大丈夫だよ。今日はね、サンドイッチだけにする」
「ほんとだよー、もう吐くんじゃないかって心配したんだから」
「ごめん、ごめん」
「莉音、今日は元気だね」
そう言って真理子はクスクス笑った。
「大丈夫。いっぱい寝たから」
「なにそれ、子供かよっ、」
「子供ですよーだっ、」
フイっと顔を背ける先。
その背けた先に見えたものに、あたしの目が思わず止まってしまった。
そのとらえたものが徐々にこっちに来て――…
「おい、莉音。お前が妊娠っつーからさぁ…」
なんて言ってくる聖君に、眩暈が起きそうだった。
忘れてた。
そうだった。
そうだったよ。
「え、妊娠?えっ、莉音、昴先輩の子、妊娠してんの?」
キャッキャ騒ぐ真理子に、あたしはため息を吐き捨てる。
「ち、違うから、ちょっと真理子落ち着いて」
「え、なに?出来ちゃったの?」
そう言ってあたしのお腹に手をあてた。
「もお!だから違うって!なんで聖君、嘘ばっか言うの?」
そう言って、あたしは真理子の手を追い払って、立っている聖君を見上げた。
「はぁ?いやいや、お前がさ、気持ち悪いだのムカムカするとか言ってっからだろーが!」
「だから何でそんな事になってんのよ!お陰であたし先輩のパパに物凄く心配されたんだからね!」
「知るかよ。俺だって、お前の所為で帰ったら親父に怒られっし、挙句の果てによぉ、美咲にまで、なに馬鹿な事言ってんの?とか怒られっし、最悪だったわ」
「しらないよ、そんな事」
「紛らわし―こと、言うなよ」
「紛らわしくしたの、そっちじゃん。…って、あーっ、もうなんであたしのサンドイッチ食べるの?」
「ムカつくからだよ」
「もう!この前もあたしの食べたよね?」
「さーな、」
ふてくされるあたしに、真理子はクスクス笑って、「サイコーだわ」なんて言っている。