恋の訪れ
放課後。

タツキ先輩を待ってると言った真理子を残して、あたしは一人で帰ってた。

帰ってたんだけども、


「おい、莉音、莉音っ、」


と言って引っ張られる所為で足がも取れそうになった。


「え、ちょっ、聖くんっ、」


ズンズンと進んでいく聖君の所為で、あたしは必死に進んでいく。


「喜べ、お前」

「え、なにが?」

「美咲が居んだよ、」

「はい?それがなに?」

「ケーキ買ってもらうぞ」

「あ、えっ、ケーキ?そ、そんな…悪いよ」

「はぁん?俺には買えつって、なんで美咲にはわりーんだよ、」

「だって、、」

「おい、美咲っ、」


正門から出てきた美咲さんに、聖君はかまわず声を掛ける。

昴先輩と全然違うじゃん。

昴先輩と聖くんって、対照的じゃん。

嫌がってた昴先輩と、全然違うじゃん。


「あ、聖。どうしたの?…って、あ。莉音ちゃん」

「こ、こんにちは」


やっと聖君の腕が離れた。


「こんにちは。昨日はごめんねぇ…。この子が勘違いな事言って」


きっと、きっとそれは妊娠の事だろう。


「いえ…」

「だーっ、もうその話はいいっつーの。それよか美咲、莉音がケーキ食べたいってさ」

「えぇっ、言ってないよそんな事」

「言ってただろ」

「言ったけど、美咲さんに頼んでまでいいよ」

「いいか莉音。よく聞け!美咲を使ってなんぼだからなっ、」

「えぇっ、」


恐ろしい事を言う聖君は、やっぱり昴先輩と対照的に違うかった。


「え、ケーキ?うん、いいよ。今から帰るから一緒に行く?」


美咲さんはニコッと微笑んであたしを見つめる。


「あ、いや、でも悪いし…」

「おーい、莉音。遠慮すんな。さっきも言ったろ?どれだけ美咲を要領よく使うか、だよ」

「えぇっ、聖くん?」


またぶっ飛んだ事を言う聖君に、あたしは目を見開いてしまった。

ちょうど、美咲さんは携帯に視線を落としていたから、聞こえていない感じだったけども。


「綺麗っつってたらなんでも買ってくれっから」

「えぇっ、聖くんっ、えぇっ、」


あたふたするあたしに聖君は口角をゆっくりとあげた。
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