恋の訪れ
「つか、そんな笑う事ないでしょ!ねぇ、香澄先輩?」
思わず顔を顰めたまま香澄先輩に視線を送ると、香澄先輩はジッと見つめながら読んでた雑誌を閉じた。
「そもそもさ、えー…誰だっけ?名前忘れちゃったけど、その人に見返しするつもりで付き合ったんだったら初めから好きじゃないじゃん」
ふーっと息を吐いた香澄先輩はやっぱりあっさりとした言葉しか返さない。
「だから好き――…」
「そうだよ。そうだよ!弘晃(ひろあき)の事、ばーっか考えてるからだよ!」
あはは!!なんて大きな声を出す真理子にウンザリする。
だけど、真理子たちにそう言われても仕方ないって部分は少しだけある。
同じ学年のヒロ君とは中学の頃からずーっと一緒で、ちょっとあたしの憧れの人だったりもする。
中一の頃に同じクラスの隣の席で親しくなってからの仲良しだけど、それ以上なんてものはない。
付き合うとか、そんな事はもってのほか。
だけど、高校1年になった途端、ヒロくんは彼女を作った。
もう、夢でしかなかった。
ヒロくんは所謂人気で好かれる存在。
性格だって素敵だしとっても優しい。
だけど、そんなヒロ君が学年一の美人さんと付き合っちゃったって事。
それはそれでショックが大きすぎた―――…