恋の訪れ
「わっ!ごめん莉音、今日タツキと約束してるんだった」
携帯を片手に声をあげる真理子に、あたしは肩を落としながら軽く手を振った。
慌ただしくあたしに手を振って教室を出て行く真理子にまたため息が漏れる。
もう一度運動場を見ると、そこには先輩の姿もヒロ君の姿もなかった。
暫くして、トボトボと教室を出る。
テストの事を考えると足が地についてないんじゃないかってくらいにフラフラする。
ヤバイ、ほんとにこのままじゃヤバイ。
だからって誰に教えてもらう?
いや、自分でするしかないのかも知れない。
お姉ちゃんは頭いいけど、そんな事言っちゃうと、また馬鹿扱いされるのに決まってる。
ママにだって言えないな、こんな事。
無造作に鞄の中に手を突っ込んで、そこからちょっとクシャクシャになったテスト用紙を取り出し見つめる。
うーん…
ほんとにヤバイかも知れない。
むしろ、何回見ても英文で書かれている言葉が分からないどころか頭がおかしくなりそうだ。
「わー…莉音ちゃんヤバくね?」
不意に聞こえた声にドクンと心臓が高鳴って、慌ててプリントを鞄の中に突っ込んだ。