恋の訪れ
「サクヤ先輩に言うのが間違ってました。…さよなら」
軽く頭を下げたあたしは踵を返す。
「って、冗談だっつーの!」
笑いながらあたしの腕を掴んだ先輩は未だにクスクス笑みを漏らす。。
「冗談じゃなかったら困ります」
「以外に莉音ちゃんってオトメンなんだね」
「はい?」
「いや。でさ、困ってるんでしょ?」
「まぁ…でも先輩には頼みませんから」
ほんとにもう頼まない。
こーなったら本気で一人で頑張るしかない。
「つか、俺も引き受けねーって。でも、役に立つことは出来るよ」
「え、ほんとですか?」
なんか分かんないけど、さっきよりもあたしの表情が明るくなった。
「うん。俺、困ってる人が居たら助けたくなるから」
「はぁ…全くそうにも見えませんが」
「結構ズバリと言うんだね、莉音ちゃんて」
「あ、すみません…」
「ま、とりあえず番号教えてよ」
「はい?」
ポケットから携帯を取り出したサクヤ先輩はあたしを見て首を傾げる。
「番号ね。じゃなきゃ、渡すものも渡せないからね」
「渡すもの…」
「そうそう。俺の知ってる奴すげー頭良くてさ、英語は毎回100点ってとこかな」
「へー…サクヤ先輩にもそんな凄い人と知り合いなんですね」
「英語ペラペラだからさ、なんか役に立ちそうなもの貰っとくから」
「あ、はい」
そう言って、あたしはそれ以上深く問うことなくサクヤ先輩に番号を教えた。