恋の訪れ
「お前、なんなの?コイツをどーしろって?」
コ、コイツ…ってあたしの事?
やっぱり昴先輩って、最低。
あれ?でもサクヤ先輩は言ってた。
頭のいい奴がいるって。
英語はいつも100点でペラペラだって。
ま、まさかね。
目の前で顔を顰める昴先輩は、電話相手であろうサクヤ先輩に向かって、ふざけんな、だとか。
馬鹿だとか、ありえねーだとか、暴言を吐きまくっていて、そんな光景を見つめながらあたしはため息をついた。
もう帰りたい…
「おい、」
不意に聞こえた声に顔を上げると、昴先輩は携帯を差し出す。
「はい?」
「代われってさ」
渋々あたしは昴先輩から携帯を受け取り、耳に当てる。
「あの…」
「あー、莉音ちゃん?」
昴先輩とは対照的に違うサクヤ先輩の声。
「あの、サクヤ先輩…」
「そこに居んだろ?頭のいい奴。ソイツに教えてもらった方が早いから」
「え、し、資料とかじゃなくて?」
「そいつが資料だって」
そう言ってサクヤ先輩の笑い声が聞こえる。
「え、いや…あの。教えてもらうって昴先輩の事ですか?」
面倒くさそうにあたしから視線を避けている昴先輩には聞こえないようにと小さな声で話す。