恋の訪れ
「そうそう、教えてもらう価値あり」
「いや、そうじゃなくて」
「あー、もしかして莉音ちゃん疑ってる?昴ってさ、見掛けによらずすんげぇ頭いいから。ほら、言ったっしょ?英語ペラペラって」
「でも、あたし…」
「じゃ頑張ってね、莉音ちゃん。あ、いい点取れたらお礼にデートしてねー」
「え、あ、ちょっ、」
プツリと切れた通信音の音に唖然としてしまう。
デートって何?
お礼って何?
そもそも何のお礼の訳?
分かんない。
やっぱサクヤ先輩って意味不明で危険。
「あの…」
顔を顰めたまま髪を掻き乱す昴先輩に携帯を差し出す。
昴先輩は何も言わずに携帯を取り、無造作にポケットに突っ込んで傍にあったパイプ椅子に腰を下ろした。
どうしたらいいんだろうか。
サクヤ先輩も余計な事しすぎ。
こんな悪魔先輩に教えてもらうのなら自分でするほうがよっぽどマシ。
いや、そうじゃなくて今は自分の能力に泣き落ちたかった。
「…プリント」
「はい?」
不意に聞こえた声に首を傾げる。