恋の訪れ

「テスト用紙」

「えぇっ!?見せるんですか?」

「見なきゃ何処が間違ってんのか分かんねーだろうが」

「あ、はい…」


と、言ったものの鞄の中に手を入れる事なんて出来ない。

あのテストをこの人に見せるなんて人類終わりに等しいくらいだ。


「早くしろって」

「あー…あの、もしかして教えてくれるんですか?」

「別に教えたくねーけど、サクヤに借りがあるからな」

「はい?」

「交換条件ってやつ」

「え、それってあたしが交換条件になってます?」

「じゃなきゃ誰がいんだよ」

「…ですね」


交換条件って、何よ。

昴先輩が言ってたサクヤ先輩の借りってなに?


なにそれ。

意味分かんない。


あたし遊ばれてる?


「で、テスト用紙」


鋭い視線を向けてくる先輩にどうしようもなく、渋々と鞄の中からテスト用紙を取り出し――…


「あっ!!」


まだ差し出してもいないのに、昴先輩は奪い問う様にあたしの手から用紙を取った。
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