恋の訪れ
「ごめんなさい。ってどー言う時に使いますか?」
「は?」
「ごめんなさいって、なんだろう」
「……」
「あたしの誕生日になると、いつもこの瓶が玄関にあるんです。もうこれで11年目…」
「……」
「莉音ちゃん、ごめんなさいって。でも、その意味が分かんなくて。あたしなんかしたのかな」
「したんじゃなくて、謝られてるんだから、されたんじゃねーのかよ」
「あ、そっか…」
「……」
「でもその手紙は一回きりで、この瓶はいつも誕生日になるとあるの。ほら、この花の名前って知ってます?」
瓶に描かれた可愛らしい黄色の花。
黄色のチューリップ。
調べたら誕生日の花でハンネマニアって言う花だった。
「しらねー」
「あたしの誕生日の花…」
「……」
「初めは怖くて食べれなかったんです。だって不気味じゃないですか。見ず知らずの人からの食べ物なんて。でも、ある日突然、気になって一粒食べたら美味しくて」
「……」
「あ、今、馬鹿だろ?って思いました?」
呆れたように見つめてくる昴先輩は、
「別に」
素っ気なく小さく返してきた。