恋の訪れ
真理子の家は喫茶店。
そこでバイトをしている香澄先輩。
だからこうやって何故か真理子の部屋でくつろぐのが日課になってる。
香澄さんは見るからに美人さんで、あの女王とは全然違う。
そこが、あたしは好きだったりする。
「で、莉音さ、」
不意に聞こえた真理子の声に視線を向けると、真理子は漸く笑いを落ち着かせ、ふーっと息を吐いた。
「うん?」
「そう言えば、前に言ってた何とか君はどうしたの?」
「なんとか…君?」
「ほら中学の頃、言ってたじゃん。優しかったのーって。会いたいなって言ってたじゃん」
「あぁ、小さい頃遊んでた男の子ね」
「そうそう。どうなった?」
「どうって、何もないよ。かれこれ10年くらい会ってないし、名前忘れちゃったよ」
「へー…まぁ、あれだね。あんたもよくコロコロ変わるもんだわ」
そう言って、真理子は再び笑いのツボに入る。
「笑い過ぎだから…」
頬を膨らませるあたしの背中をバチンと叩いた真理子は、
「だからさ、」
と言って、笑いを抑えた。