恋の訪れ
「ちょ、…先輩?」
あたし遊ばれてる?
「おい、サクヤ。からかうのもいい加減にしとけよ」
聞きなれた声に視線を向けると、呆れた表情で昴先輩が見てた。
職委員室から出て来たのか、先輩は手にプリントを持っている。
ってか、やっぱあたし遊ばれてたんだ。
フーっと息を吐きながらサクヤ先輩は壁に付けていた手を離してニコっと微笑む。
「どう?莉音ちゃん…初めてだったっしょ?」
「はい?」
「壁ドン威力…」
「え、あ…」
やっぱ、この人、危険だわ。
「うわー!あたしまだされた事ないのにー」
なんて言ってる真理子が馬鹿らしく思った。
「真理子ちゃん、タツキにやってもらいなよ」
「タツキじゃときめかないわ」
「おいおい、それ禁句じゃね?」
あはは。と笑っている真理子に混じって響くチャイム。
先にこの場を離れようとしていく昴先輩の後ろをボンヤリと見てた。
先輩…
あの女王を振ったの?
あんなムカつくけど、一応学年モテ女なのに。
あんな女に告白されたら誰でも付き合うと思ってたのに…
だからヒロ君も付き合ったんだって、そう思ってた。