恋の訪れ
窓際に行って、少し重い窓を開ける。
そこは丁度、裏庭にあたる位置で人通りが少ない場所だった。
…でも、そんな場所であたしは見てしまった。
桜の花びらが舞い散る裏庭。
桜の木にもたれる様に寄り掛っている昴先輩の前で、女が何かを言いながら先輩の腕を掴んで、その挙句抱き合ってた。
と言うよりも女が先輩に抱きついてた。
って、遅れる用事ってこれの事?
あたしその為に待たされてるんだ。
ほんと、なんなの昴先輩って。
性格は悪いし、おまけにお姉ちゃんとまで…
あんな笑顔で話すし。
もしかして付き合ってるとか?
ううん。そんな事、ありえない…
香澄先輩なら、昴先輩の事知ってるのかな…
「おい、起きろって」
バシッと頭を叩かれる衝動で、机に突っ伏している顔を上げる。
「あ、」
いつの間にか寝てたみたいで、乱れた髪を整えながらあたしは顔を顰め、頭を上げる。
机の上には描きかけのデッサン。
あまりに暇すぎて、この部屋を描いていた。
「悪い。すげー遅くなった」
「…いえ」
遅くなった理由を知っている所為か、思わず素っ気なく返してしまう。
だから、もうこうなったら使えるところまで昴先輩を使ってやろうと、意地悪な予感が働いた。