恋の訪れ
「お前、昨日の問題やったのかよ」
「やりましたよ、もちろん」
そう言って、あたしは鞄の中から昴先輩が作った英語の問題の紙を取り出す。
受け取った昴先輩はジッと見つめ、次第に眉がよっていくのが分かる。
「これ調べたのかよ」
「いえ、勘です」
「はぁ!?」
「調べてたんですけど、分んなくなって、あたしの勘です」
「お前さ、真面目にやれよ」
「やってますよ」
「絵だけは真面目にやんのな」
落書き程度に書いた絵の事を言ってるんだろうか。
つい、集中が途切れてしまったら、無意識に絵を描いてしまっている。
それが唯一、ストレスを溜めない事。
グッと右側に寄って来た先輩は目の前に紙を置き、赤ペンで訂正していく。
「-―…お前、環境をkankyouって書いてどーすんだよ、しかも″U″いらねーし」
「……」
「つか、Environmentだろーが。これは形容詞」
「……」
「おい、聞いてんのかよ」
「聞いてますよ。ねぇ、先輩?」
「あ?」
「どうして遅かったんですか?」
「用事」
「なんの用事ですか?」
「てか、それお前に言わねーといけねーの?」
だよね。
言えないよね、そんな事。
女と会ってました。って、
挙句の果てに抱きつかれてました。って、そんな馬鹿馬鹿しい事言えないよね。
あ、そか。
そー言うの、慣れてるもんね、先輩は。