恋の訪れ

なに泣いてんの?

なに、昴先輩ごときで泣いてんの?


じゃなくて、なに泣かせてんの、また…


って言うか、あたしが泣きたいのは…なんで?

持ってたテスト用紙をグシャっと握りつぶす。


ただいい点数をとって、浮かれてたのが馬鹿らしく思えた。



「あ、莉音。先輩居た?」


教室に戻ると、雑誌に目を通している真理子が笑みを向ける。


「あ、見つからなかったからまた今度でいいや」


軽く笑ってテスト用紙を鞄の中に突っ込む。


「ふーん…あ、そうだ。香澄先輩がね、ケーキ食べに行こうって言ってんだけど莉音行くでしょ?莉音のお祝いだよー」


上機嫌な真理子とは対照的に、さっき見てしまった昴先輩の光景に喜ぶことなんて出来なかった。


「あ、ごめん真理子。先生に後で職委員室に来るようにって言われてたんだ。それにママとの約束あるから…」

「え、そうなの?」

「うん、ごめん」

「なんだ、そっか。なら仕方ないね。香澄先輩にまた違う日にしようって言っとくね」

「うん」


じゃーね!と先に帰った真理子を見送った後、あたしは椅子に腰かける。

職委員室なんて呼ばれてないし、ママとの約束だって何もない。


そんなの、嘘。


ただ何となく今日は誰とも居たくない。

なんでだろう。

何であんな先輩の事、気にしてんだろう。


別に女と居たって関係ないじゃん。

誰と話してようが関係ないじゃん。


なのに、なんでムカつくの?

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