恋の訪れ

「どした、莉音」


昇降口を出てすぐ、不意に聞こえた声に振り返る。


「…あ、ヒロ君」

「体調悪いのか?顔色悪いぞ」

「ううん、大丈夫」

「それより、ごめんな」

「え?」

「ほら、なんか俺の所為で…って言うかアイツが。真理子から聞いた」

「え、あ、あぁ…」


多分、ヒロ君はこの前の事を話してるんだろうか。

きっとヒロ君の彼女の事だ。


なんでヒロ君はあの人が、好きなの?

ねぇ、なんで?

なんであたしじゃないの?


「真理子が莉音の事、心配してたから。だから俺も気になってて…」

「全然、大丈夫だよ。って言うか、またこんな所、見つかっちゃうと後で大変だよ、ヒロ君が…」


って、言うしかなかったんだ。


「あー、アイツもう帰ったから」

「そう、なんだ…」

「アイツが言った事は俺が謝るから」

「……」


…なんで、ヒロ君が?


「元はと言えば俺から莉音に話してたし…アイツが居るって分かってんのに…」

「……」


…ヒロくんは今、なんの話をしてんの?


「だから、もう莉音に何も言ってこないと思うけど、俺もあまり莉音と話さないようにするから――…」

「……」


ごめん、ほんんとに何言ってんのか分かんない。

だって、ヒロ君あたしの左に立つんだもん。


今日は頭痛いし、耳の調子が悪くて聞き取れないの。



…もう、嫌。
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