恋の訪れ
「…でも、莉音の事は友達として好きだよ――…」
大事な事なのに、ちゃんと聞き取れない事に腹がたつ。
だから、思わず左耳を塞いでしまった。
あたしともう話さないとか、友達として好きだとか、訳分かんない。
こんなハッキリ言われると、辛いよ。
ほんとに。
ずっとずっと好きだったのに…
今でも好きなのに…
「…ヒロ君、」
正門前まで来ると、あたしは立ち止まって、聞こえる右耳をヒロ君に傾ける。
「うん?」
「ごめん、忘れ物しちゃった」
「え?」
「…忘れ物。携帯…机に置いて来ちゃったみたい」
えへへ…と笑うあたしにヒロ君は、「んじゃ、先に帰るぞ」そう言って、ヒラヒラと手を振るヒロ君に、あたしも同じく振り返して背を向けた。
今日は何でこんなに嘘をつかなきゃいけないんだろう。
嘘をつきすぎて、しんどいよ。
校舎を目の前にして、正門の壁に背をつける。
はぁ…と深いため息を吐き捨てて、鞄の中から金平糖の瓶を取り出した。
今日は…青。
なんとなく、涙が出そうだったから。