花簪 ーはなかんざしー



「…白、似合うね。」


鏡の中で牧さんが微笑む。


「本当、ですか?」

「清楚な栞ちゃんにぴったりだよ。それに…」


襟足の手が、ふと止まる。


「僕が華やかにするから丁度いい。」

「… っ」




いつも、この位置。

美容師と客。
それ以上の関係は、ここにはないのに。



ーー接近したく、なる。




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