かわいい王子VS鈍感な姫
「そうだけど…。とりあえず、頑張ってみる!」


そう言って郁はガッツポーズした。


「…じゃ、話聞いてくれてありがと!七海♪」


無理やり連れて来られたんだけどな。


「おう!頑張れよ!」


『七海』…か。


前に『ななちゃん』って呼ぶのやめて、せめて『七海』にしろって言ったことあったけど…


『ななちゃん』って呼ばれなくなった今気付いた。


『ななちゃん』


そう呼ばれることが、どんなにうれしいことか…。


高校生にもなると、大声で呼ばれたら恥ずかしくなるような呼び方。


俺の特別な存在の…たった1人だけが呼んでくれた呼び方。


もう『ななちゃん』と呼ばれないと思うと、寂しくなった。



…『ななちゃん』と呼ばない…


郁が決めたことだからどうしようもない。


でも…いつかまた呼んでほしいんだ…。


だから…この先、もし郁が俺の彼女になってくれた時…


その時が来たらいっぱい呼んでもらおう。


『ななちゃん』って…。


まず、その時が来るように頑張らなくちゃな…!


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