綿菓子と唐辛子
きっと、ヒメはあの日から、俺のためにたくさんたくさん悩んでくれた。
今日、このことを話すかどうか、俺が受け入れるかどうかとか、たくさん考えてくれていたと思う。
そう思うと、たまらなくなった。
「ヒメ、俺のこと好き?」
「…っ、だいすき……っ」
「……抱きしめてもいー?」
「……っ、え…?」
夕日の色が、変わった。
少し、紫が入ってきた。
「…おいで」
ヒメがこわがらないように。
そっと、そっと。
崩れないように。
それでも、ずっと悩んできたこととか、こわかったこととか、ちゃんと吹っ飛んでいくように。
引き寄せた肩に手を回して、少しだけ、力を加えてみた。
「…っ、ナツ」
「…嫌だったら、突き飛ばしていーよ」
ヒメの匂い。
太陽の匂いだった。
小さく首をふるヒメは、俺の丁度胸のあたりで小さくうずくまっていた。