綿菓子と唐辛子
ーーー…7月。
今年も、蝉が元気に鳴き出した。
毎年毎年、蝉の声にはウンザリだが、それでもこいつらはこいつらなりに、しっかりと生きようとしているのだろう。
「…あー…っつい。食欲も失せるわ…」
購買で買ってきたメロンパンも、しんなりとしてしまっている。
冷房もかかっているのに、なんだこの暑さは。
「…あのな、熱いのはコッチだからな?お前な、こんな真夏にノロけんな、くそが」
目の前にいる勇哉は、母親からの弁当に箸を刺したまま顔をしかめていた。
「あ?別にノロけてねーよ」
「ノロけてんだろがー!昨日相坂の家でテレビ見てたとか!記念日だったとか!雑誌読んでたとか!キィーーー!!!」
バンバン!と、勇哉が机をたたいた。
その上にあったメロンパンが、ビクンと驚いたように上下する。
「いーなー、彼女。まさか相坂と付き合うとは正直思ってなかったけど」
「は?なんで」
「…なんとなくだよ!」
…俺は、ヒメとしか付き合うつもりなかったけど。
そんなこと言ったら、きっとまた勇哉にしめられるんだろう。