綿菓子と唐辛子

「…これは、あの……。小学生の時に、図工で……」

「……図工?それにしては深くね?」

「……っ、そ、………うか……?」



……あ。ダメだ。

これは、ダメだ。ダメな質問。


「勇哉、ヤメロ。女に傷のことなんか聞くな。デリカシーねぇな」


…さっきのは、ヒメに聞いちゃいけないやつだった。

絶対、そうだ。


「わり。ちょっと出るわ。行こう、ヒメ」



震えてる彼女の手を取って、俺は教室を出た。



「………ナツ………?」

「……」



…あの日。

俺とヒメが付き合うことになったときから、俺はヒメに関することには敏感になってしまった。


『チューしてないの?!』


…そんなこと、出来るわけもなかったし。

とにかく、ヒメはこう、もっと。
もっと、宝物みたいに優しくしなきゃいけないんだって。


過去を思い出させるようなことは、させたらいけないんだって。


そのことだけが、頭に残ってて。





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