綿菓子と唐辛子


綺麗でストレートな黒髪を持つ美人で、うちの生徒の中では密かにアイドル呼ばわりされている。

今日も白衣をまとった先生は、右手に大きな袋を持っていた。

そして、黙ってても綺麗なその顔が、キラリと光るように笑う。


「伊藤くん、伊藤くんのクラスに相坂姫芽さんって女の子、いるかな?」


……!!


「えっ」


相坂姫芽!出た!

…ただ、クラスにいてくれたら俺はこんなに疲れてねーよって話なんだよな。


「…すんません。クラスにいるのはいるんですけど、あの…」

「本当?!良かったー!助かるよ!」

「先生人の話聞いて下さい」

「あのね、この袋を相坂さんに渡して欲しいの。彼女の制服が入ってるんだけど…」


人の話をまるで無視する先生は、少し困ったようにその袋を俺に手渡した。

そんな袋を持たされて、不思議に思わないわけがない。


「どうしてまた、制服なんか…」


あいつ、ジャージで間に合ってるみたいですよ、と冗談半分で言うと、先生は吹き出すように笑った。






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