綿菓子と唐辛子


ヒメの言葉で聞いた過去は、ひとつだけ。

前に付き合っていた人から、無理矢理肉体的な関係を持たされたこと。

それを笑いながら、でも、それが原因で男が嫌いで、男を寄り付けないためにわざと女らしさを隠してきたと言った。


…そんな風に思っている人に、俺が簡単に触れることなんてできるか。

もし、拒否されたらどうするんだ。


…どうなるか分からないぞ、俺の心は。



「…ヒメのことは、俺が待てばいいんだ」

「は?」



他に、どんな過去が隠れていようと、ヒメはヒメなのだから、俺はそれを支えていればいい。

もう二度とその辛い過去に、ヒメが縛られないように。


「…やっぱ、プレゼントはカタチに残るものにする。もう一回考える」

「えー!まじかよ」



初めてできた彼女。世界一大事な人。

その人が生まれた特別な日にくらい、俺は俺の精一杯で、お祝いしてあげようと思う。


…ヒメが、俺のことしか見えなくなるくらいに。



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