綿菓子と唐辛子
「…ヒメ?」
そう、何度も何度も呼んでみたけれど、ヒメからの返事はなかった。
「……………」
ただ、俺は、呆然と立ち尽くすだけ。
大丈夫、ただ、家庭の事情で元の場所に戻っているだけだ。
担任も知っているのなら、間違いないだろう。
事故なんかじゃない、分かってる。
…だけど、妙な胸騒ぎが起こって、それはなかなか静まらなかった。
『…ナツ、ヒメから何か連絡あった?』
「……特には」
ヒメの誕生日当日。
1人では落ち着いていられなくて、俺は勇哉の家に転がり込んでいた。
そこに心配して電話をかけてきた崎守と話をする。
…当たり前だけど、崎守のところにも、何も連絡は入ってはいないようで。
「…どうしたんだろうね、ヒメ。突然いなくなっちゃうなんて…」
「…ん」
ほんとに、どうしてしまったんだろう。