綿菓子と唐辛子


『ナツ、でも大丈夫だよ。担任もちゃんと知ってたし』

「ん…」

『ほら、ヒメって転校生じゃん。きっと、下にいた場所に帰ってるだけだよ。お母さんもそこにいるって言ってたもん』

「ん…」



…わかってる。きっと、ヒメは地元に帰ってるんだってことくらい。

けど、どうしても不安なんだ。

だって、俺には何も言ってくれなかったから。



…誕生日だって、俺と過ごすの、楽しみにしてたじゃんか。




「ナツ〜〜。とりあえず、買ってきた飯でも食おうぜ。何も食べないのはやべーよ」

「………」



せっかく、色々なところに連れてってあげたいって思っていたのに。


ヒメがいないんだったら、どんな特別な日だって、楽しくなんかならない。


不安にしか、ならない。





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