綿菓子と唐辛子


「…制服。杉村先生から渡された」

「…」


なぜか、相坂姫芽の顔が見れない。

さっきからずっと一緒にいるのに、最後に見た相坂姫芽の顔は、はんにゃの顔だった。

見ようと思えば、見れるのに。



「…ありがとう……」

「…ん」



また、チャイムが鳴った。

相坂もはっとしたように、袋を抱き抱える。


その時、ようやく相坂姫芽の顔を近くで見れた気がするんだ。


それは、相坂姫芽が顔を俺の方に向けたことがキッカケだった。



「…さっきはごめんな。うちは相坂姫芽!転校生なんだ、よろしくな…」

「ーー…」


目が、宝石みたいに綺麗だった。

俺が見つけたんだと、見た一瞬で思ってしまった。




「…俺は…伊藤、夏那(なつな)…」




音を立てて、何かが動き始めた。

それは今まで感じたことのない、心臓の時計のような感覚だった。


「…ヒメ………」

「ヒメ?!は、恥ずかしいだろーが!!」




…前言撤回。



はんにゃなんかじゃない。


…ヒメは、


……姫だ。









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