綿菓子と唐辛子


だがしかし、そこから動かなければならないのに、てんでこの地域のことを知らない俺は、黙って手に持っている携帯を見つめた。

…わかってる。かけないことには、この状況から脱せないことくらい。


「はぁ〜〜あ…」



なんでヒメのやつ、携帯の充電器忘れるなんてヘマしたのかな〜〜。まったく。


彼女と一緒にいた男になんて、できれば一生会いたくないんだぞ。そこのところ、わかって欲しいな、少しは!


…なんて、自分の中での葛藤がしばらく続いていたが、駅で顔をしかめて携帯を見つめているうちに、肩に重りがのった。



「…なんで、かけないんですか」

「…!」



振り向くと、そこには確かに、プールで一度会った男がいた。



「なかなか連絡こないと思ったら。そんなことで意地張ってんじゃねーすよ」

「…はぁ」


会うのは二度めだが、やっぱり、耳にはピアスの茶髪男。わりとチャラいなあとは思っていたが、再び会ってみても、同じ感想だ。


「ここは田舎ですからね、バスの本数も少ないんです。さ、行きますよ」

「…」




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