綿菓子と唐辛子


夜は、本郷の家に泊めてもらった。


話の中にも出てきた本郷の母親は、こいつに似合わず優しい人で、見ず知らずの俺も笑って迎え入れてくれた。


俺たちの事情は、よく分かってくれているらしい。






「まぁ、じゃあ東京からわざわざ来たのね。長旅ごくろうさま」

「ありがとうございます」


きっと、この人だったから、ヒメのことにも尽力してくれたんだなと、納得した。



「光太郎、上にお布団用意してあるから。和室にお通しして」

「はーい」



友達の家というわけでもない、旅館というわけでもない。

なんだ、この微妙な感覚は…。


「んじゃ、アンタはこっち」

「…」



よく考えてみたら、今の彼氏が元カレの家に泊まるっていうこの状況がおかしいよな。

なんなんだこれは一体。

のこのこ付いて来た俺も俺だけど。



「荷物はそっち置いて。ここに布団置いとくから。飯できたら呼ぶからそれまではごゆっくり」

「…あ、ご飯まで。ありがとう」

「ん、気にすんなよ」



少しだけ、間にあった何かが溶け始めた気がした。

初めは、なんであの男がって思っていたけれど、昔の話を聞いたことで、その思いが少し薄まってきている。


…だからって、二人きりでいた環境が嫌じゃないかって言われるとそうでもないけど。







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