綿菓子と唐辛子


それから1時間ほど、疲れた身体を横にして休んでいた。


起きると、ご飯を用意してくれていて、その中に入ってみんなでご飯を食べた。



「まぁ、じゃあ伊藤さんは高校生なのに一人暮らしをしているのね?」

「あぁ、はい、そうですね」

「すごいわあ、光太郎なんて自分のことなーんにもできないんだから」

「…母さん、そういう話はいいから…」



久しぶりに、家族の温かさみたいなものを感じられた。

…こんなに、みんなで食卓を囲むのは久しぶりすぎる。


何もかも、この人たちのおかげだ。


俺の立場を分かっていながら、ここまでやってくれる人がいる。

これは、相手がどうであれ、感謝しなきゃいけないと思った。






「んじゃ、明日は早く起きて姫芽のいる裁判所に向かうから。ちゃんと準備しててくださいね」


ご飯を食べて、お風呂も借りて。
何もかも終わった時に、本郷が和室に入ってきた。


「あぁ、うん。案内お願いします」

「ん。ではまた明日」

「…」


…そうだ、俺たちは友達じゃない。

だから、勇哉みたいにこのあと遊んだりテレビ見たりするわけでもなく。

ただ、こうやってお客様として迎え入れられているわけで。


…本郷。


「本郷…!」



ちゃんと、ちゃんと言わなきゃいけないと思った。



「今までたくさん、たくさんたくさん、姫芽のこと守ってくれて、ありがとう…!」

「…は」

「たくさん、背中を押してくれてありがとう」

「………」



ムカつくけど、でも。

今のヒメを、ヒメとして生かせてくれたのはきっと、この目の前にいる男だ。

ヒメのことをちゃんと愛して、俺のところまで繋げてくれたのは、この男だ。

それはすごく感謝している。


だから…


「俺も、お前に負けないくらい、ヒメを幸せにする!してみせる…!」


俺もお前に、負けてちゃだめだと思うんだ。







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