綿菓子と唐辛子
それから1時間ほど、疲れた身体を横にして休んでいた。
起きると、ご飯を用意してくれていて、その中に入ってみんなでご飯を食べた。
「まぁ、じゃあ伊藤さんは高校生なのに一人暮らしをしているのね?」
「あぁ、はい、そうですね」
「すごいわあ、光太郎なんて自分のことなーんにもできないんだから」
「…母さん、そういう話はいいから…」
久しぶりに、家族の温かさみたいなものを感じられた。
…こんなに、みんなで食卓を囲むのは久しぶりすぎる。
何もかも、この人たちのおかげだ。
俺の立場を分かっていながら、ここまでやってくれる人がいる。
これは、相手がどうであれ、感謝しなきゃいけないと思った。
*
「んじゃ、明日は早く起きて姫芽のいる裁判所に向かうから。ちゃんと準備しててくださいね」
ご飯を食べて、お風呂も借りて。
何もかも終わった時に、本郷が和室に入ってきた。
「あぁ、うん。案内お願いします」
「ん。ではまた明日」
「…」
…そうだ、俺たちは友達じゃない。
だから、勇哉みたいにこのあと遊んだりテレビ見たりするわけでもなく。
ただ、こうやってお客様として迎え入れられているわけで。
…本郷。
「本郷…!」
ちゃんと、ちゃんと言わなきゃいけないと思った。
「今までたくさん、たくさんたくさん、姫芽のこと守ってくれて、ありがとう…!」
「…は」
「たくさん、背中を押してくれてありがとう」
「………」
ムカつくけど、でも。
今のヒメを、ヒメとして生かせてくれたのはきっと、この目の前にいる男だ。
ヒメのことをちゃんと愛して、俺のところまで繋げてくれたのは、この男だ。
それはすごく感謝している。
だから…
「俺も、お前に負けないくらい、ヒメを幸せにする!してみせる…!」
俺もお前に、負けてちゃだめだと思うんだ。