綿菓子と唐辛子


起きてリビングに行くと、なんと本郷の母親は簡単な朝食まで準備してくれていて、またそれにも頭を下げた。

笑顔で「いいのよ」と笑ってくれてはいたが、本当に頭が上がらない。


ただ、なんとなく、この母親から本郷が生まれてきた意味も分かってきた気がする。

ずっと、昨日の途中から分かっていたけれど、本郷は別に悪い奴じゃないんだよな。






「こっから、またバスと電車を乗り継いで行くんで。長いっすよ」

「…あぁ、よろしくお願いします」

「はーい」



本当は車で行ったほうが断然早いんですけどね〜〜。

と、本郷は余裕で笑っていた。


けど俺は、これから本当にヒメに会いに行くのかと信じられない気持ちがいっぱいで。

きっとヒメは、ここに俺がきていることは分かっている。
それは昨日の本郷の話で理解できた。

そして、きっと、本郷から過去の話を聞いているということも…。



「ーーー…」



…ヒメは、俺が全てを知ることについて、どう思ったのだろう。

嫌だとか、聞かれたくないだとか、思っていたのだろうか。


いや、嫌われたくないと言っていた時点で、少しはそういう気持ちがあったんだろうな。


…嫌われたくない、という言葉自体は、嬉しいけどさ。





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