綿菓子と唐辛子
「今日の裁判が、いつ頃終わるのかとか、分かんの?」
公園のベンチに座り、まだムシムシとする空気の中で本郷と待つ。
「…はっきりとは俺も分からないけど、そんなにかからねぇんじゃねぇかな」
「…」
テレビでは、触れることのできない世界。よく、「勝訴」なんて書かれた紙を持って出てくる人とかいるけど、中で何が行われているのかなんて俺には分からない。
ヒメが今、どんな思いで、どんなふうに闘っているのかなんて、分からない。
「…ヒメ」
心の中で、祈るしかできない。
ヒメが、ちゃんとしっかり、俺のところに戻ってきますように。
「…」
それから、本郷とは簡単なやり取りをしながら過ごした。特に話すことはなかったけど、お互いソワソワしていたのは確かだろう。
本郷だって、昔話を聞く限り、ヒメのこの事件にここまで関わったのは久しぶりのはずだし。
何度も、指でスマホの画面を照らしては、時間を確認して。
そして、目の前にある裁判所を見ては、そこからヒメの姿が出てくるのを待ち続けた。