綿菓子と唐辛子
本郷の携帯が震えたのは、俺たちが待ち始めて1時間と少しが経った頃だった。
「…っ、電話!」
いつも余裕だった本郷も、少し慌て気味で、その声で俺の身体も跳ね上がった。
「ヒメから?!」
「…いや、違う。多分ヒメの母親か弁護士だな…。ちょっと出てくる」
「ん」
1時間も待っていると、自然と身体の力は抜けていたのか、一気に心臓が働き出した気がした。
ばくばくと脈打って、頭がいたい。
全身が火照って浮いてしまいそうな感覚さえする。
「…ヒメ」
もしかしたら、ヒメの裁判が終わったのかもしれない。
そうだとしたら、もうすぐヒメと再会することになる。
…そう思うと、手のひらも急に震え出していた。
本郷が頷きながら話している。うん、うんと縦に動いている首は、何に対してあの動きをしているのか。
相手は、誰なのか。
知りたくて、知りたくて知りたくて、今すぐ走ってヒメのもとへ飛びたくなってしまう。