綿菓子と唐辛子


本郷の携帯が震えたのは、俺たちが待ち始めて1時間と少しが経った頃だった。


「…っ、電話!」


いつも余裕だった本郷も、少し慌て気味で、その声で俺の身体も跳ね上がった。


「ヒメから?!」

「…いや、違う。多分ヒメの母親か弁護士だな…。ちょっと出てくる」

「ん」


1時間も待っていると、自然と身体の力は抜けていたのか、一気に心臓が働き出した気がした。

ばくばくと脈打って、頭がいたい。

全身が火照って浮いてしまいそうな感覚さえする。


「…ヒメ」



もしかしたら、ヒメの裁判が終わったのかもしれない。
そうだとしたら、もうすぐヒメと再会することになる。

…そう思うと、手のひらも急に震え出していた。



本郷が頷きながら話している。うん、うんと縦に動いている首は、何に対してあの動きをしているのか。

相手は、誰なのか。

知りたくて、知りたくて知りたくて、今すぐ走ってヒメのもとへ飛びたくなってしまう。



< 219 / 265 >

この作品をシェア

pagetop