綿菓子と唐辛子
「うん、うん…。はい。わかりました。じゃあそこまで俺たちも向かえばいいですね。はい、了解です」
少し遠いところで電話をしていた本郷は、そのまま俺の方に近づいてきながら、電話を切った。
よいしょ、と、下に置いていた荷物をとる本郷。
電話はなんだったんだと思いながらも、周りを気にする本郷の動きが気になって、口を開けなかった。
でも、周りに俺たちだけだということを確認すると、顔を近づけてきて、口を開いた。
「ヒメの母親から電話があった。今裁判が終わって、そのまま車を出したみたいだ。でも、ここらじゃ報道陣が囲ってて身動きがとれない」
「…!」
早口で話すその声は、できるだけ俺たちが関係者だと分からせないようにしているようだった。
「だから、ひと駅歩くぞ。ここじゃだめだ。会ってたりしたらすぐに見つかる」
「わかった」
確かに、さっきよりも裁判所の周りには報道陣らしき人たちが集まっていた。
それを気にしないふりをしながら、俺たちは1つ向こう側の駅を目指して歩く。