綿菓子と唐辛子

どのくらいの時間、ヒメのことを抱きしめていただろうか。


ぎゅっと力を込める腕は、まるで力比べをしているようにお互いの身体を抱きとめていた。


「ナツ…」

「…」



かすかに震えている声。
でも、決して恐れているわけではない、優しい声。


その声を聞くたびに、何度も何度も力を込めて、ヒメの存在を確かめた。



「…遅くなってごめんね、ヒメ」

「ううん…っ」

「迎えに来たよ」

「…っ」



俺のところに、戻って来てくれてありがとう。
恐れずに、こうやって飛び込んできてくれてありがとう。


いろんな想いが交差して、また涙が出た。




「会いたかった、ナツ。会いたかったよ…」

「ん、俺も」



頬を伝っていく涙を誤魔化すように、もう一度ぎゅっとヒメを抱きしめて、そのまま、腕の力を抜いた。


「ナツ…」

「…」


涙でグチャグチャのヒメの顔。
でも、それでも信じられないくらい綺麗だ。


頬を伝う涙を親指で拭って、ずっと触れたかった髪を撫でた。